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2014年9月24日水曜日

(その2)伊達市がCエリアの除染をめぐり、住民と話し合い 「市長はウソをついたんですか? 公約どおりに、Cエリアの全面除染を!」と、住民からの声



 この日参加したのは、Cエリアの住民8名と、伊達市の職員らが4名。
 伊達市側の職員は、写真右から、放射能相談センターの二木健氏、放射線対策課の半澤隆宏氏、市政アドバイザーの多田順一郎氏、放射線対策課の田中清美氏です。



伊達市民と話し合いをする伊達市職員

■全面除染、するのか、しないのか?

 話し合いの冒頭で市民のひとりが、「仁志田市長は選挙公約でCエリアも除染をすると言ったのに進んでいない。今後、どういう流れで進めていくのか?」と質問しました。
 これが今回の話し合いの本題です。 

 すると、放射線対策課の半澤氏は、24年度から現在の基準(地表で3マイクロシーベルト毎時以上)を設定し、25年度にはひととおり除染を行っている。ガラスバッチのモニタリングによって、年間1ミリシーベルトもおおむねクリアしている。ただ、今年1月の市長選のときに、仁志田市長が『まだ市民が不安に思っているなら聞いてみる必要があるだろう』と、アンケート調査を実施することになった。基準にこだわらず、心配を聞いて、それに対応しようと。それで今、フォローアップをしている」 と答えました。

 こうした返答に対して、参加した市民からは、以下のような声があがりました。

参加者Aさん
「フォローアップというのは、どういう意味を持っているのか?心のケアのことか? ほとんどの住民はきちんと理解していないのではないか。仁志田市長が、市長選で『Cエリアの全面除染』を打ち出したので、やってくれるものだと思って投票した人も多いはず。ちがうのであれば、フォローアップの定義をきちんと説明をすべきだ」


参加者Bさん
「地上で3マイクロシーベルト毎時以下なら安心ということではない。そこに放射線源があるということが心配だ。子どもはどこでも遊んでしまう。吸い込みによる被ばくもある」

参加者Cさん
「子どものことを考えた場合、今の空間線量でほんとうにだいじょうぶだと言い切れるのか?財政的な問題もあるが、まず子孫を守るという観点から政策を進めたほうがいい。過剰な除染だとしても、子孫を守ることにつながるならやるべきだ。それが私たちの使命ではないか」

 こうした市民からの声に対して、伊達市職員の半澤氏は、
「除染は早くしないと意味がないので、伊達市ではいち早くとりくんできた。Cエリアは、年間1ミリシーベルトもおおむねクリアしている。しかし、どこまでやっても心配はつきない。自然界にも放射線はある。食べものの中にもカリウム40をはじめとする放射性物質はある。だからセシウムだけにこだわらないで。福島県以外の地域だって、事故前にもっと空間線量が高かった地域もある。あまり過剰に心配しないほうが、お気持ち的にもよいのではないか。放射線以外にもリスクはあるのだから」といった趣旨のことを述べました。

  しかし、そんな文部科学省の副読本に書かれているような説明で、市民が納得するはずはありません。

ABエリアでは、0.5マイクロシーベルト毎時でも除染している

 Cエリアに住むある主婦から、さらに質問が飛びました。
Bエリアの上保原では、0.5マイクロシーベルト毎時でも全面除染をしているのに、私の自宅の庭は0.5マイクロシーベルト毎時あっても除染してもらえない。なぜしてもらえないのか?同じ税金ではないのか?いつまで待たせるのか?」

 また、ほかの住民からも、「ほかの自治体では、0.23マイクロシーベルト毎時以上で除染をしている。なぜ伊達市はやらないのか。優先順位があるだけで、AエリアもBCもすべてやると思っていたという憤りの声もあがりました。

 これに対して放射線対策課の半澤氏は、「どこかで線引きをしなくてはならない。判断は、各市町村がする」と返答。
 すると市民のなかからは、「判断するのは市民だ!」という反論のほか、「伊達市は科学的判断に基づいて除染をしているというが、これまで我々が経験したことのない事態なのに、どうして正確な判断だと言えるのか?」といった意見が出ました。

■いまだに“100ミリ神話”や“ホルミシス効果”を主張する伊達市

 すると今度は、放射能相談センターの二木健氏が、100ミリシーベルトの被ばくで0.5パーセントがんの罹患率が上がる。ほんとうは、200とか300ミリシーベルト被ばくしないとはっきりした数字は出てこない。100ミリシーベルトで0.5%、それ以下は0ミリシーベルトまでまったくはっきりしたことはわかっていない。また、『ホルミシス効果』といって、ある程度の放射線は体に良いという実験結果も報告されている。逆に、低線量の被ばくは体に悪いという証拠はなかなか出てこない」と述べ、伊達市はそのうえで、放射線のリスクを厳しめにとらえて対策を立てているのだとして、理解を求めました。

(ママレボ編集部注;低線量の被ばくでもリスクが上がるという論文は、すでにたくさん出されています。ママレボにも、岡山大学の津田教授のレポートとともに記しています。http://momsrevo.blogspot.jp/2014/01/3.html

 また、伊達市の市政アドバイザーである多田順一郎氏は、自身が子どもだった1950年~1960年代の核実験の話を持ち出し、「あのころは、さかんに大気外核実験をやっていた。そのときに日本に降りつもった量は、1957年から1969年までの合計値でストロンチウム90は1平方メートルあたり2700ベクレル。セシウム137はその3倍以上。当時はビニールハウスなどなかったので、野菜は全部路地ものだった。私たちはセシウムやストロンチウムが積もった野菜を食べて育ったが元気だ。私らが子どものころの粉ミルクは、セシウム1371キログラムあたり30ベクレルから300ベクレル入っていたことがわかっている。実際にセシウムが入ったミルクを赤ちゃんに飲ませてホールボディカウンターで測り、セシウム137が体内に蓄積されていく実験もされている。その世代の人たちも、実際に測定された赤ちゃんも、現在健康に存命している」として、暗に現在の汚染はたいしたことがないのだと述べました。

■仁志田市長は、ウソをついているんですか?

 しかし、参加者のひとりで、Cエリアに住むある主婦は、これにキッパリ反論しました。

「私はただの主婦です。専門的なことはわかりません。昔のことも、チェルノブイリのことも関係ないのです。ここは日本です、福島です、伊達市です。だから、伊達市民の意見を取り入れてほしいのです。はじめ、仁志田市長はCエリアも全面除染をすると言っていました。でも、日数が経過するにつれて発言が変わってきて、結局やらなかった。そしたら選挙前になって、あわててCエリアも全面除染するというようなチラシを作って配りだした。それを見て、住民はCエリアも全面除染してくれるのだと思って仁志田市長に投票した人がいっぱいいます。それが9月になっても、いまだに進んでいない。結局、仁志田市長はウソをついてるんですか?
 
 こうした疑問に対して伊達市側は、はっきり回答をすることはなく、Cエリアのスポット除染はしている。年間1ミリシーベルトの基準はクリアしているので、今後はアンケート結果に基づいて対応していきたい」と、述べるにとどまりました。

 結局、この日の話し合いは平行線。今後も、話し合いの場を設けるということで解散となりましたが、果たしてCエリアの除染は進むのでしょうか――。(このままでは、とても進むとは思えません)

0.23マイクロシーベルト毎時の原点に戻れ

 話し合いを終えたあと、参加者のひとりは、「このまま仁志田市長が公約を守らないなら、なにかほかの手段を考えないといけない」と話していました。
 
 最後に、この話し合いを傍聴して感じたことを述べておきます。

 まず、仁志田市長が公約を守って全面除染すべきであることは言うまでもありません。だって、市民との「約束」なんですから。
そのうえで、環境省が当初定めていた.023マクロシーベルト毎時という除染基準に立ち戻るべきだと思います。

 伊達市はこれまで、環境省が当初に示した0.23マイクロシーベルト毎時という除染基準を上げるよう国に働きかけをしてきただけでなく、Cエリアに関しては、伊達市独自の「地上で3マイクロシーベルト毎時」という高い除染基準まで設けています。 ほかの自治体は、0.23マイクロシーベルト毎時を除染基準の目安としているのに、なぜ自治体ごとにその基準が異なるのでしょうか。こうした点も、住民たちが混乱する大きな要因になっています。


 まずは原点に戻って、0.23マイクロシーベルト毎時以上の場所は、仁志田市長の公約どおりに全面除染をすべきではないでしょうか。(0.23マイクロシーベルト毎時がベストではないですが、最低でもということです)ぜひ考えを改めていただきたいと思います。

ママレボ@和田


ママレボ通信:「被ばくを自己責任にしてはいけない」と、弁護士も批判。除染目標の数値引き上げへ。


ママレボ通信:「除染基準?毎時0.23マイクロシーベルト引き上げをめぐる問題(その1)」





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2014年9月22日月曜日

(その1)  伊達市がCエリアの除染をめぐり、住民と話し合い~ 「Cエリア除染はうそ?! まるで詐欺のような伊達市の手口」~

Cエリアも除染して復興を加速」という公約を掲げて、今年1月に再選した福島県伊達市の仁志田昇司市長。


仁志田市長が、今年1月の選挙で配布したチラシ

 しかし、再選から8か月たった現在でも、まだCエリアの除染は進んでいません。

 Cエリアとは、年間被ばく線量が5ミリシーベルトを下回る地域で、伊達市の約70パーセントにあたります。

 伊達市はこれまで、市内を3つのエリアに分け除染を進めてきました。
 年間20ミリシーベルトを超える線量の高い地域をAエリア、それに隣接する地域をBエリア、そして年間5ミリシーベルト以下の地域をCエリアとして、被ばく線量の高い地域から順に除染を行ってきたのです。

 しかし、Cエリアについては、地表で3マイクロシーベルト毎時を超える場所をスポット的にしか除染をせず、屋根などは、たとえ3マイクロシーベルト毎時を超えていても、除染の対象外となっていました。

 選挙前から、Cエリアの住民たちのなかには、こうした対応に不満を持っている人がいて、「私たちの地域も全面除染をしてほしい」と要望が上がっていたのです。
 仁志田市長は、こうしたCエリアの住民の票も取り込むために、上記のような公約を掲げました。


 朝日新聞デジタル版にも、下記の記事が掲載されています。


この記事には、
「伊達市の仁志田昇司市長は8日の記者会見で、放射線量が比較的低い地域の除染について、局所的に高い場所だけを対象としてきた従来の方針を撤回し、希望する全戸を除染する考えを示した。山林除染も4月以降に実施する。「市民の不安払拭(ふっしょく)」が狙い。26日投開票の市長選を意識した。」

と記されています。


 しかし、伊達市はまるで、江戸時代の悪代官のような手口で市民を欺きました。

全面除染どころか、選挙前とまったく方針を変えなかったのです。
今現在でも、地表で3マイクロシーベルト毎時以上のマイクロホットスポットのみしか除染していません。


 では、伊達市は選挙後、何をしているかというと、Cエリアの住民を対象に今年4月から除染に関するアンケート調査を実施しました。


伊達市が実施している除染についてのアンケート調査の用紙

そして、アンケート調査の結果、除染の希望があったお宅に電話や訪問をし、放射線量を測定した結果、地表で3マイクロシーベルト毎時を下回っている場合は「これくらいの線量だったら除染しなくてもだいじょうぶですよ」と、住民を説得してまわっているのだそうです。

 以下は、伊達市が配布している資料です。

            (クリックすると拡大します)


 全面除染・部分除染・側溝除染・農地山林除染の希望が合計220あるにもかかわらず、実際に除染が行われたのは、今年7月末時点でたったの5と記されています。しかも、全面除染ではありません。

 これについては、伊達市で被ばくのリスクを訴えている数少ない議員のひとりである高橋一由市が、9月の伊達市議会で伊達市職員の半澤隆宏氏に以下のような趣旨の質問をしています。

「除染についてよくわかっていない高齢者をつかまえて『除染しなくてもだいじょうぶ』だと説得しているのではないか? 職員が何人も家に訪問し、『この数値だったら安全だから、除染する必要はない』と言われてしまえば、『不安だからそれでも除染してほしい』と反論できる市民は、なかなかいないのではないか? 」

つまり、市側の方法に疑問を投げかけているのです。


議会の動画もありますので、ご覧ください。(517秒あたりから)




 この日の答弁によると、除染の要望があって職員が訪問した1,182のうち、職員が訪問して説明をした結果、住民が「除染しなくてもよい」と納得した件数が740にものぼっているとのこと。

 これでは、なんのためにアンケート調査を実施したのかわかりません。
 
 Cエリアに住む主婦Aさんの話によると、「2月にアンケート用紙を提出したのに、市から委託された業者から電話連絡があったのは、つい数日前(9月中旬)」とのことだと言います。
 Aさんはアンケートに「庭の芝生が0.5マイクロシーベルト毎時ほどあるので除染してほしい」と書いておいたそうですが、業者は電話口で、「除染できるかどうかは、数値による。測定してみないとわからない」と答えたそうです。
 Aさんは、「Bエリアでは、0.5マイクロシーベルト毎時でも全面除染しているのに、なぜCエリアはしてもらえないのか?結局、測定しても『3マイクロシーベルト毎時ではないからだいじょうぶ』と言われるだけでしょう」と、怒りと不安を口にしていました。
 
 フォローアップ除染の基準が、本来の0.23マイクロシーベルト毎時ではなく、3マイクロシーベルト毎時という高い数値を設定していることにも驚かされますが、Cエリアの全面除染を公約に掲げていたにもかかわらず、測定して「だいじょうぶだから除染をする必要はない」と説得してまわっているだけなら、それこそ税金のムダ使いでしょう。

 このような伊達市の対応に対して業を煮やしたCエリアの住民の方々が、919日に伊達市の職員や市政アドバイザーの多田順一郎氏と話し合いを持ちました。




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2014年9月18日木曜日

守りたいものは何ですか?~郡山市で、屋内遊び場建設予定が、屋外に変更されてしまいました~

 震災から3年半たっても、いまだホットスポットが多く点在する福島県郡山市。
本日、この郡山市で、大人たちの経済活動のために、子どもの健康がまた踏みにじられてしまいました。
「子どもたちが安心して遊べる屋内遊び場をつくろう」ということで計画されていた郡山市の屋内施設建設4か所のうち3か所が、なんと屋外施設に変更されるという決議が本日の郡山市議会にて、賛成多数で可決されてしまったのです。

 なぜ、屋内施設から、屋外施設の建設に変更になってしまったのか――。

 郡山市議から入手した資料によると、その理由には驚くべきことが書かれていました。
赤線部分の③をご覧ください。


(クリックで拡大します)

「屋内運動施設4か所を整備することで、『郡山は危険だから屋内の遊び場をつくった」などと間違った情報発信になる可能性がある」と記してあります。


 間違った情報発信?? 
 郡山市はほんとうに、子どもが被ばくを気にせず外で思いっきり遊べるほど安全な場所なのでしょうか?

 「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」が今年5月に、屋外施設の建設予定地のひとつとなった「旧行健第二小学校跡地」の周辺をホットスポットファインダーで測定したところ、いまだ放射線量の高いホットスポットが点在していることがわかります。

赤丸の部分が、屋外遊戯施設の建設予定地。この周辺の除染は、いまだ手つかず。


 測定者によりますと、「周辺を車で通りすぎるついでに測定したものなので、歩いて測定すれば、もっとホットスポットが見つかるはずだ」ということです。
  なのに、現状を調査もせず、上記のような意見をまとめたのは、有識者や専門家で構成されている「郡山市の屋内運動施設用の整備に関する検討委員会」です。

 記者は2013年10月に、この検討委員会の一員である菊池信太郎医師(郡山市在住・小児科医/NPO法人ペップ子育てネットワーク)に、子どもの外遊びについてインタビューしました。

 そのときに菊池氏は、次のように答えています。

「福島の子どもたちが安心して外遊びができるように、郡山市に対して『公園のリニューアルをすべきだ』と提唱している。“リニューアル”というのは、たんに除染をするだけではなく、遊具もすべて取り換え、芝も張り替え、かつ子どもが思わずゲーム機を取り出して遊びに行きたくなるような楽しい仕掛けが施された公園を位置からつくりなおすことだ。たとえ公園を除染して、空間線量がじゅうぶんに下がったとしても、その地域で『この公園は安全だ』という共通認識をもてなければ、お母さんは自分の子どもを遊ばせにくい。公園をリニューアルすれば、地域一帯で『この公園は安心だ。遊ばせてもよい』という共通認識が得られる」

 おそらく、こうした検討委員たちの意見にもとづいて、屋外の遊び場が整備されることになったのだろうと推測します。
 今回の件について、事実確認をしようと、ふたたび菊池氏にコメントを求めましたが、「公式コメントは差し控えたい」との返答。その代わり、「日ごろの持論ですが…」という前置きのもと、下記のようなご意見をいただきました。

「郡山にかぎらず全県下にいえることですが、外遊びをしたい子(させたい保護者)、外遊びを控えたい子(させたい保護者)のどちらにも、子どもたちが健やかに育つための例えば遊び場や、運動場をそれぞれに用意し、そして、どちらの子どもたちにも彼らが一生健康に育つための土台(体力や運動能力、気力、コミュニケーション能力など)を保障しなくてはいけないといういうことだと思います」

 もちろん、原発事故がない状態であれば、菊池氏のおっしゃる通りでしょう。しかし、原発事故が起きて、大量の放射性物質が降り注いでしまった現在において、果たしてこの理屈が通用するのかどうかはおおいに疑問です。
 まず、「被ばくのリスクがふえている」ということを共通認識として、施策を考える必要があるのではないでしょうか?

 こうした事態に対して郡山市在住の主婦・塾講師の根本淑栄さんは、「本来は、子どもたちが被ばくを避けて運動できるように屋内施設をつくる目的だったはず。それが、なぜ屋外施設に変更されるのか理解できない。こんな施設を4つもつくるなら、そのお金を子どもたちの保養にまわして、ウクライナやベラルーシのようにすべての子どもが保養に行けるようにすべきです」
と憤りをあらわにしていました。

 また、郡山市議で、一児の母でもある滝田春奈さんも、以下のような不信感を示しています。

「当局の報告では、平成25年度にNPO法人郡山ペップ子育てネットワークの実施したアンケート結果で、事故後3年半が経過し除染が進んだことで、放射線の影響を心配し、外出を控えることが『全くない』『あまりない』と回答する保護者が、多数を占めるようになったことを理由に挙げて、屋内だけにこだわらず屋外遊び場も視野にいれるようになったとのことですが、果たしてそうでしょうか?  
 NPO法人郡山ペップ子育てネットワークの実施したアンケートの原本をよく読んでみると、幼稚園と保育園の保護者に対して、『この1か月のお子さまの様子を思い浮かべ、一番近いものをぬりつぶしてください』とあり、その回答の選択肢として、『放射線のために外出することを心配する』『まったくない』『あまりない』『ときどきある』『よくある』とありました。これでは、心配する主語が幼稚園児と保育園児であるわけだから『まったくない』『あまりない』との回答が多いのもうなずけますが、議員への配付資料には、心配する主語は保護者に変えられており、保護者が外出を控えることがなくなったかのように記されていました。このようにアンケートの主語を変え、都合よく読み取っていることに、不信感と怒りを覚えます」

 これでは、大人の経済活動のために事実をねじまげ、子どもの健康がおざなりにしていると受け止められてもしかたありません。
 また、滝田市議は、「屋外で遊んでほしいのであれば、すでに各公園で屋外遊具を新しいものに交換したのだから、そこの除染を徹底的にするなどの対策を講じるべきであり、新たな屋外遊び場はいらないはず」とも述べています。

  原発事故が起こってしまった以上、残念ながらリスクは増加しているのです。

「リスクはある。それをいかにして軽減するか」という共通認識に立って施策を講じなければ、住民は安心して暮らせませんし、避難している方は戻ってこないでしょう。また、今後も移住する人は減らないでしょう。


 これは福島県の自治体や近隣県、そして政府に訴えたいことですが、もう一度、保護者の声に耳を傾け、“リスクありき”の政策を考えてほしいと強く思います。

ママレボ@和田

 子どもの外遊びについての記事は、ママレボ6号に掲載されています。

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ある自主避難者のママからの訴え ~大人が守るべきものは何でしょうか?~

福島県から関東に母子避難しておられるママさんから、ママレボに投稿をいただきましたので、ご本人に許可を得て掲載させていただきます。


***********


私は2011年4月に、福島県から関東へ母子で避難してきた者です。

避難してから、福島の情報を必死に集めていました。

少しずつ決まっていくなかで、我が子が医療補償の対象になるのかなど問い合わせを続けました。

全て対象から外されていました。理由は、住民票を避難先の自治体に移したから、です。

福島県は、18歳以下の子どもの医療費無料化や、累積線量計貸し出しなどを行っています。しかし、県外に自主避難して住民票を移してしまうと、こうしたものからは適応除外です。

 福島県は「福島県の子を対象にしているのでそれはできません。今住んでいる所に聞いてみてください」と言います。
私が避難している自治体に尋ねると、「それは福島県に問い合わせてください。わかりません。個人を特別に扱うことはできませんから」と――。

そうこうしているうちに、二人の子どもは多量に鼻血を出し、心配は募る一方です。

自分で線量計を購入し、医者を探し、はじめから説明して首をひねられたりする。
長期的に診てくれる先生を頼りにして三年半が経ちました。

市や県、東電、国も聞く耳持たず。

私たちの多くが住民票を移せない理由は、行政サービスが受けられなくなることと、会社に前例がなく、説明することによって、より事が大きくなり、立場が悪くなるだろうと考えてのことです。
また、住民票を移そうと思った方は、福島県に住民票がないほうが、子どもらへの将来の風当たりは少ないと考えての決断です。
つまり、プラスになるかマイナスになるか苦渋の判断を迫られるわけです。

最近、伝えることに疲れていました。投げ出してしまおうか…
でも、みんなどう考えているんだろう…と思っているところに自主避難者交流会の通知が来ました。
数日前に参加しました。皆さん同じ悩みで苦しんでいました。

私は2011年からの思いがあって確かめました。(あの時の悔しさ。ひとりでお風呂で声を押し殺して泣いたこと。どうしても感情が入ってしまいます)


福島県から来た担当のまったく変わらない答えに、再び突き落とされた気持ちになりました。
これ以上話をしても無駄。腹が立ち席を外しました。
こんな福島には帰りたくない。


相談窓口は県にしかないのが現状ですが、県外に出た子どもらに関してはまったく役立たないものです。
私たちは皆、最後に部屋に残り大きな壁を前にして途方にくれました。

これからどうしようね…何に訴えていったらいいのかな…」

私は身近な所から浸透させていきたい。そうするしか方法が見つからない。いつまでも変わらなくてもまだ諦めきれません。

事実を見定めたいと思う気持ちがあるのなら、どうか皆さんの力を少し貸してください。


福島県には、「笑顔で楽しくやろうよ」という人たちがたくさん上から送り込まれているようです。

手を組んだようにして入りこんで浸透させて分裂させたり何も言えないようにする。

子どもの体の心配は絶対に消えません。
今も血液検査をしたり、エコー検査したりを続けている子どもら。

学校を休んだり遅刻をしたりしても自主検査なら公欠や出席扱いにはならない。

県が文書を出しているのは公的な検査だけ。一年に一度の甲状腺検査、三ヶ月に一度のかかりつけ医での経過観察。(人それぞれです)
時間とお金をかけて生きていくしかない子どもらの将来が心配です。


これから進学、就職、結婚する子どもたち。住民票を福島に置いておけるのでしょうか。
福島を出て何も認められない子どもらがこれからもどんどん増えていきます。その時気づいても遅いと思います。

県外で就職したとき検査だからと会社を休めるのか。40年後までずっと背負っていくもの。
やはり正しく知って考えてもらいたい。

今日、明日、福島に住民票を移せば被ばくしていなくても、福島の子どもとして医療費も無料。県外への体験活動の招待もあり、優遇されます。

被ばくしているかもしれない子どもたちはバラバラになっていきます。
大人が守るべき物は何でしょうか。




                              ***********

ママレボでは、みなさまからの投稿を受け付けております。避難されている方、支援されている方、日ごろ感じていらっしゃることや、伝えたい思いを、どうぞお知らせください。
メールは、こちらまで。info.momsrevo@gmail.com

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2014年9月15日月曜日

【寄稿】福島甲状腺検査で104人が悪性!! 原発放射能と関係は? -理科教員はどう見るか、生徒にどう学ばせるか?-

創価大学教職研究科教授・桐山信一さんが、ママレボに貴重な考察を寄せてくださいました。
ご紹介させていただきます。
桐山さんが、独自に作成された甲状腺がん発生数の地図を見てみると、セシウム沈着地図と似通っていることが見えてきました。


************

福島甲状腺検査で104人が悪性!! 原発放射能と関係は? 
-理科教員はどう見るか、生徒にどう学ばせるか?-
創価大学教職研究科教授 桐山信一

原発事故後の3年間にわたる甲状腺先行検査が終了し、平成 26630付で県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要暫定版が公開された。
 検査結果概要暫定版は第16 回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成26824日開催)資料2-1であり、下記のURLより入手できる。


検査結果概要暫定版によると、受診者はのべ296,026人であり、その99.9%である295,689人の結果が確定している。
2,237人がB判定となって細胞診を受診し、男子36人、女子68人の計104人が悪性(疑いも含む)と診断された。

このなかで手術は58人が実施し、57人が甲状腺がん(乳頭がん55人、低分化がん2人)、1人が良性結節であった。
これらの数値にはどのような意味があるのか。関係者には様々に関心が持たれているのではないだろうか。

 ここでは、悪性に地域差がみられるのかということに絞って考えてみたい。悪性数のポワッソン分布による検定、悪性地域分布と放射能沈着量との相関、甲状腺等価線量の推定などは別の機会があれば公表してみたい。

チェルノブイリを知っている人なら、悪性の発生と原発事故による放射能汚染の関連を考えるのは自然な思考である。原発事故が悪性の原因だということなら、どのような傾向が現れるか。
原発に近い地域ほど高い発生となるなどの地域差が見られるはずである。
しかし、先行検査というスクリーニングによる早期発見であるならば、地域差が見られることは考えにくい。
結果概要暫定版の表9(下記参照)によると、人口10万人あたりの「悪性ないし悪性疑い」者率は、避難区域33.5人、浜通り35.3人、中通り36.4人、会津地方27.7人であり、朝日デジタルの記事甲状腺がん、疑い含め104人 福島の子供30万人調査(大岩ゆり、2014824日)に図が示されている。(図A-1)が、記事より抜粋した図である。

            (9

           (図A-1) 朝日デジタルより抜粋                      

 結果概要暫定版では、悪性の発生とその地域について次のように考察している。

・・・一次検査受診者 295,689 人を地域別に分析した結果、・・・(中略)・・・「悪性ないし悪性疑い」者率は「避難区域等 13 市町村」、「中通り」、「浜通り」はほぼ同様であったが、「会津地方」でやや低めであった会津地方では二次検査完了者の割合が他の地域に比べて低めであり、その影響が考えられる。

原発から遠い会津地方に悪性者率が低いことを認めるものの、悪性の発生に地域差はないとの見解にみえる。つまり、原発事故と甲状腺癌発生には関係がないという主張である。

ここでは、科学教育の基本に立ちかえり、事象を異なった視点からみるとどう見えるかを考えてみる。これは、学校教育で生徒にもっとも培いたい科学的リテラシーの一つである。
「4地域よりもう少し細かく市町村を単位に集計して図を作ると、どのような傾向がみえてくるだろうか?」と問題を立てる。

(図A-2)は筆者が検査結果概要暫定版からデータを拾って市町村別に集計したものである。
          (図A-2)

中高生ならできるデータ処理である。発生の度合いは、その市町村で悪性が出た数Nと、受診者数に対する悪性の数の割合r2つで判断することができる。図の数値はNを示す。数値のない市町村では、悪性の発生は現在0である。色は次のようなrの区分を示している。

赤:r0.05%以上、黄:r 0.020.05%まで、青:r0ではないが0.02%未満


悪性発生度はNrの両方で決まる。Nが大きくr値が高い市町村は発生度が高いと考えてよい。Nrの両方をみると次のような傾向が見える。

・総じて原発に近い東部に多く発生。
・原発-二本松市・福島市を結ぶラインに多く発生。

 また、原発の南側60kmのいわき市(r0.04)、原発から南西80kmの白河市(r0.06)にも多く発生していることがわかる。
 会津地方はほとんどが発生数0であるから、A-1で会津地方が10万人あたり27.7となるのは、会津若松市の悪性数5が効いていることがわかるだろう。ただし、会津地方の2次検査はまだ続いているので、今後悪性が出て27.7より増える可能性はある。

以上のように集計方法を変えてみると、悪性の発生率に地域差が見られるとの仮説も成り立つのではないか。


<ママレボ編集部コメント>(図A-2)とセシウム134、137の沈着図を比較してみると、甲状腺がんが多く発生している地域と、汚染度合いが高い地域の相関性が見える。

教育の場では、教師は事実をいろいろな視点から多角的に見て検討させなければならない。また、生徒はそういう姿勢を身に付けなければならない。そうしなければ、自分で判断して結論を出し行動する生活者になることはできない。

 筆者は過去に高校で物理を教え、現在は教職大学院・教育学部で理科教育などを担当している。「福島における甲状腺癌発生と原発放射能の関係をどう考えるか」というテーマは、まさに今日的な国民的課題であり、様々な科学的判断をともなう問題でもある。筆者のブログもできるだけ多くの方に、とりわけ理科や保健の先生方に見ていただきたい。そして、広く学校教育の場で生徒に紹介していただき、理科教育などの題材として取り上げていただきたいと願う。原発を考える題材にしていただきたい。

参考)桐山研究室公式HP: http://home.soka.ac.jp/~kiriyama/