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2013年10月12日土曜日

被災者の要望を反映しないまま、原発子ども・被災者支援法が閣議決定~法律の改正も必要か~

 東日本大震災から2年7カ月となる10月11日、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針が閣議決定されました。


■要望は、ほとんど修正案に反映されず

 すでにお伝えしてきたように、8月30日に復興庁が提示した基本方針案は、被災当事者や支援者の要望を反映したものではありませんでした。

 復興庁は、「国民の意見を広く聞く」ということで基本方針案に対するパブリックコメントを募集。
集まった要望の数は約4900件にのぼりました。

 その後、パブリックコメントの意見や、福島・東京で行われた公聴会で寄せられた要望をもとに、基本方針案が修正され、10月10日にマスコミ向けに発表されました。

 修正後の基本方針案はこちら
 寄せられたパブリックコメントはこちら


 しかしこれもまた、既存の施策の寄せ集めばかりで、要望として多くあがっていた下記のような意見のほとんどが無視された形となりました。
 唯一、反映されたのは、現在福島県に住民票がなくても、事故当時福島県に居住・滞在していた大人や子どもも、基本調査や甲状腺検査が受けられるということくらいでした。

<パブリックコメントや公聴会で多くあがっていた要望>

「支援対象地域を年間被ばく量1ミリシーベルト以上の地域にしてほしい」


 →反映されず。


「これから避難したい人に対しても住宅を支援してほしい」

 →反映されず。

  公営住宅への入居の円滑化のみ明記。しかし、公営住宅の数は非常に限られている。

「借り上げ住宅の長期延長、借り換えを認めてほしい」

 →反映されず。

  平成27年度3月まで延長。「4月以降は代替え的な住宅の確保等の状況を踏まえて適切に対応」というあいまいな表現のみ。

「福島県外の子どもたちにも健康調査を実施してほしい」

 →反映されず。

  「新たに有識者会議を開催し、福島近隣県を含め、事故後の健康管理の現状や課題を把握し、支援の在り方を検討」と書かれているだけ。


「全国で公聴会を開いてほしい」

 →反映されず。



■形だけのパブリックコメント

 本来であれば、寄せられたパブリックコメントをすべて公開し、どのように基本方針案に反映するのか、また、反映できないものに関しては、「なぜ反映できないのか」を、きちんと説明するのが筋だと思います。


しかし、そうしたことがまったく行われないまま閣議決定されようとしていたので、閣議決定の前日にあたる10月10日、被災当事者や支援者たちが「このまま閣議決定しないで!」という意向を伝えるために、復興庁の担当者を交えて院内集会を行いました。
 

 
                    [復興庁の担当職員に要望書を手渡す被災者の方]

 この集会で、復興庁の担当職員から、驚くべき発言が飛び出しました。

参加者から、「被災者の意見を十分に聞かず、基本方針案を閣議決定することは、子ども被災者支援法に反しているのではないか」「全国の議会や市長からも意見書が寄せられていると思うが、閣議決定の前に説明は行ったのか」といった質問が出たときのこと。

 復興庁の担当職員は、
「内閣府の法制局とも十分相談しているので、支援法に違反はしていない。支援法のなかには、基本方針は政府の責任で決定すると書かれているため、自治体の意見を聞いたり説明したりする必要はない」
といった趣旨の返答をしたのです。

 下記の地図にあるように、全国から「支援法に関する意見書・要望書」があがっており、被災者の意見を十分反映して基本方針を決めるようにとの声があがっています。
 これらをすべて無視して、説明さえしなくても「支援法には反していない」というのです。
 これには会場の参加者からも、どよめきと怒りの声があがりました。




■予算はいまだ付いておらず

 この院内集会のなかで、復興庁の担当職員は再三にわたり、「予算の裏付けがあるものや、来年度の概算要求を踏まえて、盛り込める修正は盛り込んだ。言い方を変えると、予算の裏付けのないものは施策に盛り込めない。ただし、毎年予算要求があるので、その内容をふまえて見直しをしていく」と述べていました。
 つまり、いくら私たちが要望をあげても、予算がついていない施策は反映されないということです。

 ということで、改めて復興庁の平成26年度の概算要求を見てみたところ、担当職員が言うように、私たちが要望しているようなことに対する予算付けは見あたりません。
 ほとんどが、「福島へ帰還する方」や「福島に住み続ける人」に対する予算ばかりです。(もちろん、それはそれで必要です)

復興庁 平成26年度予算概算要求概要
 
予算が付かない限り、いくら修正を求めても、反映されないということです。


■法律改正も視野に入れて

 ならば、きちんと予算付けしてもらえるように、法律に明記してもらう必要があるのかもしれません。
 たとえば、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(被ばく者援護法)を見てみると、「第6章 費用」という条文があり、この中に、自治体の負担がどこまでで、国はどこを負担するかということが明記されています。
 「原発子ども・被災者支援法」は理念法なので、こうした具体的な予算に関する項目は、条文の中に含まれていません。

 私自身は法律に詳しくありませんので確かなことは言えませんが、もし、こうして明記されなければ具体的な施策が実行できないのであれば、早急に法律の見直しも含めて検討する必要があるのではないでしょうか。新たに別の法律をつくるということも考えられます。もちろん、これは簡単なことではないと思います。

 自治体や市民団体のレベルで身近な被災者の方々を支えながら、大きな岩である国を動かすための長期戦にのぞまなくてはなりません。

                                          和田@ママレボ

 

【原発事故子ども・被災者支援法の閣議決定に関する報道はこちら】

原発避難者が支援法の基本方針批判





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